2010年7月4日日曜日

ITサービスのロゴ1 〜Android

すっかり更新が滞ってしまいました。
本業が忙しかったということもありますが、どのロゴを取り上げるか迷っているうちに、時間が経ってしまったということもあります。過去の名作を取り上げるのは簡単なのですが、それだと専門書がたくさん出ているので、いまさらここで紹介しても面白くない、と思ってしまいます。できればまだ評価の定まっていない、タイムリーな話題を提供したいと考えています。それにしても良くも悪くも議論したくなるような、ロゴって最近少ないですね。

さて、今回取り上げるのは今話題の携帯端末用OS「Android」のロゴです。


はっきり言って全くよくありません。
googleは、今や世界トップクラスの資金力を誇る会社だと思うのですが、なぜいつもこういうことに予算を掛けないのでしょうか。まあ、誰がデザインしたのかは知りませんので、お金が掛かっているのかは実際にはわかりませんが。(本ブログは「予備知識なしでいかにデザインの批評ができるか」を目的の一つにしているので、あえて調べてません)
そういえば、google自体のロゴも最初のバージョンはかなり不細工でした。








このロゴは、創業者自身がデザインしたものだそうなので、完成度が低いのは仕方がないでしょう。現在のロゴは格段に品質が高くなっています。
Androidのロゴも、デザインの素人が作ったのだとしたら、なかなか上手いといえます。不格好ではあるけれども、シンプルで汎用性があります。

google自体の企業文化は各方面で高い評価を受けている印象がありますが、なぜデザインはこのレベルなのか。googleの各種サービスのアイコンを見渡してみても、全体的に今ひとつです。本当に不思議でなりません。





●Android

造形:★★
テーマ表現:★
汎用性:★★★

※5点満点


2010年5月25日火曜日

00年代以降のロゴデザイン傾向〜東京スカイツリー

最近80年代のデザインが気になっています。というのは、最近のデザインの方向性とは正反対だからです。以前古本屋で購入した『現代世界のグラフィックデザイン(全6巻)/講談社』という88〜89年にかけて発行された全集を開くと、とにかく主張が強いデザインが多いのが目につきます。それが現在でも活躍する巨匠の作品であっても、今だったら採用されないようなデザインも多く、とても興味深いです。そして、デザインにとって「時代の空気」がいかに無視できないかを痛感させられます。現在と比較したときの、80年代デザインの特徴は、以下の点が挙げられると思います。




(80年代/00年代以降)
線:太い/細い
色彩:原色(メリハリ強い)/中間色(調和重視)
レイアウト:かっちり・高密度/ゆるやか・低密度


以上は見た目の特徴ですが、80年代はとにかく「目立つ」ことに重点が置かれていたと思います。個人的には、00年代以降の「ゆるやか」なデザインの流行はすでに終わり始めていると思っていますので、80年代のデザインは今後のデザインの上でとても参考になります。


さて今回取り上げるロゴは今話題の「東京スカイツリー」です。




これは典型的な「00年代デザイン」だと思います。つまり「最高に無難なデザイン」だということです。つまり「誰からも文句が出ないデザイン」であり「誰もが見慣れたデザイン」です。東京スカイツリーのような公共性の高いものに関しては、最近では「市民目線」での文句が出やすいため、このようなデザインになったのはある意味仕方がないと思います。デザインの質については飛び抜けたところはないですが、うまくまとまっていると思います。ただ、スカイツリーが完成する頃にはちょっと時代遅れなデザインとして受け止められる可能性があります。





●東京スカイツリー

造形:★★★☆
テーマ表現:★
汎用性:★★★

※5点満点

2010年5月14日金曜日

読めないロゴについて考える〜六本木ヒルズ

よいデザインとは何か?
それは教科書的に言ってしまえば、「造形」「コンセプト」両方においてすぐれたものだと思います。

デザイナーにおいて「造形」のクオリティに関しては、ほぼ共通した認識を持っていますが、「コンセプト」については人によって違うことがあります。これは「よいデザインは何を目指すべきか」という答えが、デザイナーによって違うからです。わかりやすい例を挙げると、


「よいデザインが目指す目標とは」

・美術館などに永久保管される、高い文化的な価値
・売れる、大きな金銭的利益を生み出す
・イメージアップする
・信頼性・ブランド力を高める
・派手でインパクトがあって、目立つ、流行する

など様々です。


前置きが長くなりましたが、今回取り上げるロゴは「六本木ヒルズ」です。





このロゴが発表されたときは、いくつかのデザイン雑誌で取り上げられ、それなりに話題になった記憶があります。海外の有名デザイナーの作品だったはずです。
私はこのロゴを最初に見たとき「こんな読めないロゴタイプをよく採用したな」と思いました。
そして、学生時代に受けた外国人講師のある授業のことを思い出しました。その外国人講師は日本企業に勤めるデザイナーで、最初の授業のときに自分がこれまでに手がけた作品を見せてくれました。そのなかに、この六本木ヒルズのロゴタイプと似たようなコンセプトのものがあったのです。何が似ているかと言うと、英語のロゴタイプで、それぞれの文字に欠けているようなデザイン処理を施したものだったのです。その講師はこのロゴタイプをわたしたちに見せながら「このロゴは、日本人には読みにくいと言われ、採用されなかったものです。欧米人なら普通に読めるんだけど」と言いました。確かに一瞬では読めないものでした。言われれば読めるのですが。

私の考えではやはり「一瞬で読めないロゴ」はよいデザインコンセプトだとは思えません。
ですので、最初に述べた「よいデザイン」に対する考え方がこのロゴ制作の関係者とは違うのです。どちらが正しいと言うことはないと思います。

ちなみに、よく知られていることですが、六本木ヒルズのロゴタイプは、色々なバージョンがあります。これらのバージョンがセットになっていることもコンセプトのようで、この考え方は斬新でおもしろいと思いました。ここに「読めないロゴ」が採用された理由があるのかもしれません。










●六本木ヒルズ

造形:★★
★★
テーマ表現:★

汎用性:★★

※5点満点

2010年5月5日水曜日

防衛省・自衛隊、そして裁判員制度

今回もリクエストいただいたロゴを取り上げます。「防衛省・自衛隊」です。

このロゴが決定したのは3年前くらいだったと思いますが、周囲の評判がとても悪かったのをおぼえています。公募コンペで選ばれたデザインだそうです。
千葉県のロゴの例を挙げるまでもなく、多数の意見に乗っかって批判することはとても簡単です。特に歴史的な評価や権威付けがなされていない、アート(音楽を含む)やデザインは、どうしても[それまでになかったようなもの][違和感を感じさせるもの][一見簡単に作られたようなもの]であればあるほど批判されがちです。そのような批判は、予備知識などなくても誰でもできます。しかしそれは業界にとってプラスになるとは思えませんし、ただの妬み・足の引っ張り合いにも見えます。逆に、歴史的な評価が定まっている「名作」「傑作」を批判するのは、「それがなぜよくないのか」を説得力をもって説明するのに専門知識や高度な美意識が必要なので、読むに値すると個人的には思います。

さて、上記のような考えを踏まえつつ、本ブログでこの「防衛省」のロゴをどう論じるのか。これはもう、冷静に長所・短所を挙げていくしかありません。理想を言えば、批判の嵐が吹き荒れているなかで、論理的な説得力をもって「これはすばらしい。傑作だ」と言えればよいのですが・・・。




まずは、マークの造形から見てみましょう。構成要素として、円と楕円のみで構成されています。「防衛省」という巨大な組織のマークとして、シンプルな要素だけで構成することはよいことだと思います。以前のエントリでも述べたように、巨大な組織であれば用途も多岐にわたるため、汎用性が高い方がよいのです。しかし、このマークには残念ながら汎用性が高いとは決して言えません。
問題は2点あります。まずは、カラーリングにグラデーション処理を使用していることです。グラデーションは印刷方法によってはきれいに出ないことがあるので、通常は避けることが多いのです。今の印刷技術は昔よりは格段に向上しているので、グラデーション表現を使用しても、場合によっては問題ないこともあります。それでも印刷媒体(例えば段ボールなど)によっては色が汚く出てしまうことがあります。
2点目の問題は、真ん中の輪っかの最細部分や、2つの円の周りにある緑色の線が細すぎることです。これも印刷によってはうまく表現されない(つぶれてしまう)ことがあります。

さて、ではロゴの設計思想(コンセプト)はどうでしょう。これは、現在自衛隊が置かれている難しい状況を考えると、誰も「答え」が出せないのではないでしょうか。そのため、一番クレームが付かないことを念頭に置いて、選出されたのではないかと思います。そのような消極的な姿勢で制作されたものには、かえって多くのクレームがつくことがあります。なぜなら、誰も満足しないからです。シンボルマークの隣の「防衛省・自衛隊」の丸ゴシック体もそのような考え方で選ばれたのでしょう。安直なエコブームを彷彿とさせるようなロゴだと思うのですが、いかがでしょうか。

これらの問題は、制作者にあるとは思いません。公募コンペはコストが安く、指名コンペよりは公平性があるので、利用したくなるのもわかりますが、その分主催者側の資質が問われます。安易な公募コンペで採用されたデザインには質の高いものは少ないと思います。

●防衛省・自衛隊

造形:★★
テーマ表現:★☆
汎用性:★★

※5点満点




奇しくも、裁判員制度のマークにも上記に論じた解説とまったく同じことが当てはまります。(これは公募コンペではないようですが)。こういうものが流行なのでしょうか。不思議です。











●裁判員制度

造形:★★
テーマ表現:★☆
汎用性:★★

※5点満点








2010年4月29日木曜日

ロゴ制作のプロセス

みなさんには、趣味を楽しむために欲しいスキルってありますか?

私が欲しいと思うスキルは「楽器の演奏」です。
技術さえあれば自分の好きな曲をコピーして楽しんだり、
オリジナルの曲を作ったりできるからです。
ミュージシャンがブログなどで「今日は暇だから好きな○○の曲を弾いて遊んでました」などと書いてあるのを読むと「楽しいだろうなー」と羨ましく思います。

さて、そういう観点から見たグラフィックデザイナーの楽しみとは、何でしょう?
それは「自分の身の回りのものを自分で作れる」ことに尽きます。
例えば、CDラベルやファイルの背ラベル、レターヘッド、プライベート用名刺、
結婚式やパーティーの招待状、年賀状、同人誌などなど・・・。平面デザインに関する限り、欲しいモノがなければ自分で作ることができるのは大きな楽しみです。

先日、旧友I君から「自分だけのオリジナルTシャツをつくりたいから、ロゴを作って欲しい」というメールが突然来ました。
メールの内容を詳しく見てみると、「JIMINTOとローマ字で、デザインは宇宙とか未来とかを感じさせるものにしたい」とのこと。
なぜ「じみんとう」なのかは意味不明ですが、
それはたぶんI君なりのユーモアなのでしょう。
ロゴを作るのは本当はけっこう手間が掛かるのですが、おもしろそうなので「ミュージシャンが遊びで楽器を弾く」くくらいの感覚で、やってみました。

本ブログでは、ついでにこのロゴを使って「ロゴ制作のプロセス」を紹介してみたいと思います。

まずは、テーマを吟味します。
・宇宙
・未来

思いつくままに、いろいろとスケッチします。
いろいろ描いてみた結果、「宇宙」「未来」ということで、わりとベタな感じで
立体の斜字体にしようと思いました。


ここではだいたいのイメージさえつかんでおけばよいので、
かなりラフなスケッチです。

イメージができたら、そのイメージにあった書体があるかどうか、手持ちのフォントを探します。
今回は運良く、すぐに見つかりました。これをベースに加工すれば、イメージ通りのロゴタイプができそうです。




イメージに近づけるよう、文字の間隔を詰めてゆきます。


さらにイメージに近づけるために、本格的に加工します。



ロゴとしてのまとまり感を出すために、最初の「J」と最後の「O」をつなげてみました。

さらに「宇宙っぽさ」を出すために、電波っぽいイメージを追加し、仕上げとして、
3Dツールで、加工します。




これで完成ですが、せっかくなので他のバリエーションと、Tシャツに配置した場合のイメージ図を作ってみました。


以上、ロゴ制作のだいたいの流れを解説しましたが、実際仕事でやる場合は仕事の規模にもよりますが、この10倍くらいの手間を掛けます。コンセプトの立案、スケッチなどの実作業以前の行程でも、かなりの時間が掛かりますし、実作業でも、より美しくなるように造形の精度をあげてゆきます。その後、たくさんのバリエーションを作って、実際に使用した場合のシミュレーションを重ねます。

ですので、今回の解説はあくまで「だいたいの流れ」として
認識していただきたいと思います。

2010年4月24日土曜日

サンマイクロシステムズ社

今回は読者の方から要望のあったロゴを取り上げます。
「サンマイクロシステムズ社」です。


マーク部分は四方向から「sun」と読めるようになっていて、
発想はおもしろく、魅力的です。

「Sun」の文字部分のフォントは、ITC Garamond Book Condensed Italic のようです。
ITCはフォントメーカー名、Garamondはフォント名、Bookはフォントの太さのバリエーション、Condensedは、縦に狭いバリエーションのことです。
Garamondは色々なフォントメーカーから発売されていますが、メーカーによってデザインはけっこう違います。ITC社のGaramondは品質が高く、個人的にかっこいいと思います。
サンマイクロシステムズ社のロゴのかっこよさのかなりの割合を、書体のかっこよさが占めていると思います。

さて、全体的な印象としては発想がおもしろく、かっこいいロゴなのですが、
「Sun」の文字は、そのまま使用せずに、ロゴ用に調整したほうがよかったのではと思います。
というのは、「Sun」の文字同士をかなり詰めているのですが、「u」と「n」が流れとしてつながらなくなっているのです。
下図をご覧下さい。



オレンジ色の部分は、「u」の書き終わり部分と「n」の書き始め部分の延長線です。
つまりこのフォントは、ここまで詰めることを前提として設計されていないのです。
通常、ロゴタイプをデザインする場合、既存のフォントを元に作る場合も多いのですが、
その場合、隣り合う文字との関係性から、デザインの微調整をします。
このロゴタイプの場合、少なくとも文字のつながりに関しては、調整をしていないようです。意図してやったのかもしれませんが、個人的には調整したほうがよいと考えます。


●サンマイクロシステムズ社
造形:★★★
テーマ表現:★★★★
汎用性:★★★

※5点満点

2010年4月18日日曜日

ロゴの何を判断基準としているか

ここまでいくつかのロゴについて解説してきましたが、
ロゴの良し悪しをどこで判断しているか、という疑問を抱く方もいると思います。

本来なら、最初に書いておかなくてはならないことだと思いますが、
あまり深く考えずにスタートしてしまいましたので、
ここで本ブログの基本的な方針を述べておきたいと思います。

ロゴの良し悪しを判断する基準は以下の3つです。

1.造形的な美しさ
2.テーマに対する、適切さ(説得力)
3.汎用性

これらの基準は、一般にロゴデザインにおいて教科書的な判断基準です。
ただし、これらを適切に判断するには、ある程度の美的感覚と経験の両方が必要です。
数値で計測できるようなものではないので、人によって評価が変わる可能性はありますが、
プロであれば「ある程度」は一致します。

上記の基準において「名作」と呼ばれるロゴはこれらすべてを満たしています。
ただし、「3」は想定される使用媒体が限定されていれば、かならずしも満たす必要はありません。
例えば、商品ロゴであれば、商品のパッケージにしか使用されないこともあります。その場合はパッケージデザインのなかで適切であればよいのです。
逆に、「3」が重要視されるのは企業のCIです。企業のロゴ・シンボルマークは、巨大看板から、名刺まで、使用範囲が実に幅広く、そのため細かすぎるデザインや、再現しにくいグラデーションなどは避けられる傾向にあります。企業ロゴがシンプルなものが多いのはそのためです。

上記判断基準において、一番評価の分かれるのは「2」だと思います。
これには、判断するそれぞれの人の「価値観」が入るからです。
つまり理想とする「デザイン観」はプロであってもそれぞれ違うのです。

本ブログは、「総佐衆」が考えるデザイン観に基づいて書かれています。
ですので、もしかしたらデザイン関連の教科書とは違うこともあるかもしれません。
そこも含めて本ブログを楽しんでいただけると幸いです。

2010年4月14日水曜日

mixiとGREE

今回は、日本の二大SNSサービスのロゴを比較してみたいと思います。

mixiとGREEです。









文字部分は、どちらも既存書体でなくオリジナルだと思われます。
両者を比較して特にどちらが優れているというほどの差はないと思います。どちらも「それなり」のレベルではあります。

GREEは、「E」部分に若干違和感を感じるのと、マーク単体での使用に向かない気がします。あと、立方体のマークと、細めのサンセリフ(ゴシック)書体を見ると、どうしても「NeXT」コンピューターのロゴを思い浮かべてしまいます。「NeXT」のロゴは巨匠ポール・ランドデザインの名作ですが・・・。

mixiは、ロゴタイプとしてはよく言えば今風です。最近のロゴの傾向を見ると、軽さや柔らかさを感じさせるものが多いように思われます。mixiはその流れの中にあるロゴです。これは、ごく単純に言ってしまえば80年代的な消費文化への反動と、近年のエコブームの影響
でしょう。
そのため、好かれるのも早く古びるのも「mixi」の方だと思いますが、どうなるでしょう?

2010年4月11日日曜日

ロゴとパッケージ

数年前、メーカーに勤務していた頃、一番多かった仕事が商品パッケージのデザイン制作でした。パッケージデザインにおいて商品ロゴは重要な要素ですが、店頭に並べたときの派手さが求められることが多く、企業CIなどと比べるとロゴとしての完成度は低くなりがちです。

そんななかで、名作として評価されているロゴの一つが、「ポカリスエット」です。



一見、既存の書体を並べただけのシンプルなロゴですが、発売当初から今に至るまでロゴ自体はほとんど変わることなく、現在に至っています。

文字の配置と下部の波のマークのバランスが絶妙です。

パッケージデザインは、完成度の高いロゴさえあれば、他に絵的な要素など必要がないことを証明しています。
「ポカリスエット」はパッケージデザインの最高峰の一つであることは間違いないでしょう。
ちなみに、以前は自販機専用のロゴもあったようです。




これも、完成度は高い名作ですが、見かけなくなってしまったのが残念です。

多少なりともグラフィックデザインの教育を受けたことのある人にとっては、
今回の話題はよく知られていることですが、
本ブログは幅広い人たちに読んで欲しいので、
今後もこのような基本的な情報を積極的に紹介してゆきます。

2010年4月8日木曜日

横浜都市ブランドロゴマーク3案

本日の更新のために、他のネタを用意していたのですが、
こんな記事を見かけたので、今日はこれを取り上げたいと思います。

横浜市がロゴマーク3案、「もう不要」の声も : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 横浜市は7日、横浜の未来イメージを国内外に発信する「都市ブランドロゴマーク」について、3候補の中から市民の投票で決めると発表した。
 市には、ひし形の徽章(きしょう)「ハママーク」をはじめマークやキャラクターが約160種類あり、市議会からは「これ以上いらない」との意見も出ているが、市は11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)などを機に「マークを生かして横浜をPRしたい」としている。投票は8日から始まり、6月中には決める予定。
 ロゴマークの作成は、2008年12月に始まった市民参加型都市ブランド共創プロジェクト「イマジン・ヨコハマ」からスタートした。横浜の未来のイメージについて、市内各地で約30回開かれ、市民約870人が参加したワークショップで意見を聞いた。昨年の開港150周年イベントでも来場者にアンケートした。
 その結果、開放的な雰囲気を持つ街でイメージがまとまり、スローガンを「OPEN YOKOHAMA」に決定した。ロゴマークは、制作委託先の大手広告会社・博報堂(東京都)が10候補をつくり、林文子市長らが今回の3候補に絞った。
 3候補は、「Y」の文字をハートの形で表現したA案、風車の羽根をイメージしたB案、打ち寄せる波と起伏豊かな街並みをモチーフにしたC案。
 一方、市議会からは「キャラクターやマークがたくさんあり、分かりづらい」「約5600万円もの事業費を投じる価値があるのか」などの声が上がっている。
 これに対し、7日に記者会見した林市長は、「マークが多いのは知っているが、担当部署が市民に親しみやすく(事業などを)認知してもらうために作っているので、尊重したい」と話し、事業費についても「ワークショップなども行ってきた総費用で、見合っていると考えている」と強調した。
 市民投票は、同プロジェクトのホームページ(http://imagine-yokohama.jp/)などで受け付ける。締め切りは5月20日。

市民の税金を使ってロゴを作ることや、その経緯、企画の内容自体に関してはここでは触れません。あくまで「ロゴ批評ブログ」として、純粋にロゴの批評のみを行います。
ちなみに、現時点ではこれらのロゴを誰が作ったのか(記事によると、受注は博報堂だそうですが)、いくらかかったのかなどの情報も調べていません。前もってそういう情報を知ってしまうと、ちゃんとした批評にならないと思うのです。

左から a案 b案 c案。




ランクをつけると、

1位:b案
2位:a案
3位:c案

となります。b案とa案はあまり差がありません。
c案は数段劣っていると思います。まとまりがいまひとつ。数合わせで作った感じがします。
b案は、造形的な完成度を上げれば、よいロゴになる可能性はあります。

2010年4月3日土曜日

日本年金機構

ロゴの良し悪しを判断するときに、「ぱっと見たときの瞬間的な印象」で決めることは有効な方法の一つだと考えます。
通常、専門家でもない限り、ロゴを意識的に見ることはないからです。
みんな無意識的にロゴを見ていると思います。


ここで、「有名な企業だから」とか「かっこいい製品を出している会社だから」とか予備知識を意識した瞬間に判断が鈍ります。



先日見かけたこのロゴに違和感を感じました。







瞬間的に「なにこれ!?」と思ったのです。



よく見ると、マークの設計思想は悪くないと思いました。

でも、造形的にもうすこし良くできたのでは。



文字部分は、モリサワの「丸フォーク」書体です。

2010年3月31日水曜日

携帯電話会社のロゴを比べてみる

携帯電話会社は、経営母体の統合や、ブランディング戦略の方針転換などが多く、
時代とともにめまぐるしく変化する業界のため、
ロゴのリニューアルがもっとも多い業界だと言えるでしょう。


最近ですと、NTTドコモのロゴがこれまでのドコモのイメージとは全く違うものになり、
ちょっとした話題になりました。

携帯電話にはソフト・ハード共に常に「新しさ」が求められる状況が今でも続いていて、
ものすごいスピードで、ロゴも消費されてしまいます。
あっという間に手垢がついてしまうのです。

そんな中で、各社のとったブランディング戦略の中で現在のロゴデザインに与えた影響を
簡単に分析してみたいと思います。



まずはドコモ。





私はこのロゴの造形には違和感を感じます。
その理由は、一文字一文字を単純化しすぎて、「文字」という感じがしないからです。
ロゴタイプは文字で構成されているのですから、最低限「書き順の流れ」を感じさせるべきだと思います。
かろうして、最初の「d」の部分は下部の曲線には「流れ」を感じますが・・・。
まあ、これまでのドコモのブランドイメージを変革することが目的でのリニューアルだったようなので、その点においては成功していると思いますが。


次にau。








二文字だからというのもありますが、認識性・使いやすさと言う点において優れたロゴです。
この二点においては、3社中一番でしょう。
単純に見えて、一文字一文字の造形はドコモのロゴよりも複雑な線で構成されています。
オレンジというイメージカラーも、他と競合しにくいという点でよい選択だと思います。


最後にソフトバンク。



文字部分は、既存の書体を微調整したものだと思われます。
これは推測ですが、ソフトバンクのロゴタイプは、
「ロゴ」が速いスピードで消費されてしまうことを計算に入れて制作されたのでは、と思います。
個性の強いロゴは、街にあふれかえった途端に手垢がつきます。
それですぐに安っぽく、古くさくなってしまいます。
それならいっそのこと、オーソドックスなフォントで作った方がよいと判断したのではないでしょうか。
これは、ロゴが消費されることを防ぐための最良の手段だと思います。

2010年3月27日土曜日

ロゴリニューアルの難しさ1

大企業(特に大型店舗)のロゴ・シンボルマークのリニューアルは、普段消費者の目にとまることが多いだけに、私達の生活にも多少なりとも影響します。
品質の低いロゴがあふれかえった街には住みたくないと私は思います。

今回取り上げるのは「ダイエー」です。確か5~6年くらい前(?)にリニューアルされました。

旧ロゴはデザインの教科書にも載るような名作としてデザイン業界では評価されています。

円を切り取って「D」の形を表す、シンプルで力強いイメージです。










リニューアル後は、さわやかで信頼感・清潔感を感じさせるイメージです。









ロゴとしての完成度は、旧ロゴの方が圧倒的に勝っている、と私は思います。

しかし、だからといって、リニューアルが失敗だったとは思いません。
旧ロゴの方は、主張が強い造形であるだけでなく、消費者が「ダイエー=経営状態が悪化している古い形態のスーパー」として、このロゴと共にイメージしてしまっている風潮がありました。
今回のロゴリニューアルは、「これまでのダイエーのイメージを違うものにしたい」という点において成功していると思います。

ただ、そのために「名作」ロゴを捨ててしまうことになったのが、先々考えたときに良い結果になるのかは不明です。

リニューアル後のロゴは、その完成度において長くは使えないクオリティだと思います。